国公立大入試の仕組み
複雑さを増す大学入試制度は、保護者の方にとって分かりにくいと感じることがあるかと思います。ここでは、国公立大学の入試の仕組みについてご紹介します。また、2021年1月入試から実施された大学入学共通テストについて詳しくは、「大学入学共通テストとは」をご覧ください。
共通テストと個別学力検査で合否が決まる
国公立大学の一般選抜は、一次試験的役割を果たす「共通テスト」の得点と、大学別に実施される「個別学力検査(二次試験)」の得点の合計で合否の判定が行われます。
共通テストは、1月中旬の土・日に全国で一斉に実施され、国公立大学志願者は原則受験する必要があります。共通テスト実施後に公表される解答・配点で自己採点を行った後、志望する大学に出願します。
個別学力検査は共通テストの約1カ月後の2月下旬から「分離・分割方式」で実施されます。「分離・分割方式」とは1大学・学部(学科)の定員を「前期日程」「後期日程」の2つの日程に振り分け、それぞれの日程ごとに選抜するシステムです。一つの大学・学部(学科)を2回受験することもできますし、それぞれの日程で異なる大学を受けることも可能です。
また、一部の公立大学で前期・後期日程とは別に「中期日程」で個別学力検査を実施します。これらをあわせると最大3校の国公立大学を受験することが可能となります。
ただし、前期日程で受験した大学に合格して入学手続きをすると、中期・後期日程に出願した大学の合格対象からは外されます。そのため、第一志望校は前期日程で受験するのが一般的です。定員配分も前期日程が全体の8割を占め、難関国立大学や医学科では後期日程を行わない大学も多くあります。「分離・分割方式」は複数回の受験機会があるとはいえ、実質的には前期日程を中心とした仕組みとなっており、後期日程は2期募集的な意味合いが強いといえます。
※大学入学共通テストについて詳しくは「大学入学共通テストとは」をご覧ください。
2023年度 国公立大学一般選抜スケジュール
※追試験のスケジュールは記載していません。
※日程は変更となる場合があります。必ず大学入試センターHPにて最新情報をご確認ください。

※出願期間や試験日程の詳細は、「東京大学の入試日程」(8月更新)をご覧ください。
共通テストは7科目の受験が必要
共通テストは6教科30科目が出題されます<表1>。
合否判定で必要となる教科・科目は大学ごとに異なりますが、国立大学では7科目を課すのが主流です。公立大学では3教科以下で受験できる大学も少なくありませんが、受験科目を絞れば負担が減るかわりに、志望校の選択幅が狭まります。
国公立大学志望者は7科目に対応した学習が必要と考えた方がよいでしょう。
2022年度高校入学者から、新学習指導要領に基づき、「情報」が加わった7教科21科目に変更となります。
数学②では「数学II」が廃止となり、「数学II・B」に「数学C」を合わせた1科目が出題されます。
また、地歴・公民は「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「地理総合、歴史総合、公共」「公共、倫理」「公共、政治・経済」の6科目から最大2科目を選択して受験することとなります。
そのほか、国語と数学②の試験時間は10分増となる予定です。
5(6)教科7科目
7科目の内訳は大学に委ねられていますが、文系学部では外国語・国語・地歴公民2科目と数学・理科から3科目の合計5(6)教科7科目、理系学部では外国語・国語・地歴公民1科目、数学・理科各2科目の合計5教科7科目とするところが一般的です。
<表1>2023年度 大学入学共通テスト出題科目
教 科 | 出題科目 | 配点 | 試験時間 | |
---|---|---|---|---|
国語 | 「国語」 | 200点 | 80分 | |
地理 歴史 |
「世界史A」 「世界史B」 「日本史A」 「日本史B」 「地理A」 「地理B」 |
1科目100点 | 1科目選択 60分 2科目選択 130分 |
|
公民 | 「現代社会」 「倫理」 「政治・経済」 「倫理,政治・ 経済」 |
|||
数学 | ① | 「数学Ⅰ」 「数学Ⅰ・ 数学A」 |
100点 | 70分 |
② | 「数学Ⅱ」 「数学Ⅱ・ 数学B」 「簿記・会計」 「情報関係基礎」 |
100点 | 60分 | |
理科 (*) |
① | 「物理基礎」 「化学基礎」 「生物基礎」 「地学基礎」 |
2科目100点 | 2科目 60分 |
② | 「物理」 「化学」 「生物」 「地学」 |
1科目100点 | 1科目選択 60分 2科目選択 130分 |
|
外国語 | 「英語(リーディング、 リスニング)」 「ドイツ語」 「フランス語」 「中国語」 「韓国語」 |
英語 リーディング100点 リスニング100点その他 200点 |
英語 リーディング80分 リスニング60分その他80分 |
- * 理科はA~Dの選択方法により科目選択
A:理科①2科目 B:理科②1科目 C:理科①2科目+理科②1科目 D:理科②2科目 - ※国語は「国語総合」の内容を出題範囲とし、近代以降の文章、古典(古文、漢文)を出題
- ※地理歴史・公民、理科②において2科目選択する場合は、各科目60分で解答を行うが、両時間の間に答案回収等を行う時間を加え、試験時間は130分とする
- ※英語(リスニング)は音声問題を用い30分間で解答を行うが、解答開始前にICプレーヤーの作動確認・音量調節を行う時間を加え、試験時間は60分とする
- ※「大学入試センター」資料より作成
- ※大学入試センターホームページ http://www.dnc.ac.jp/
前期日程は学科試験、後期日程は小論文や面接も目立つ
二次試験の入試科目は日程によって多少傾向が異なります。
前期日程は、一般的には文系学部で「英語、国語、数学、地歴・公民」から2~3教科、理系学部では「英語、数学、理科」から2~3教科が課されますが、東京大学、一橋大学、京都大学など一部の大学では4教科を課します(2022年度入試)。
後期日程では教科数が1~2教科と少ないケースや、総合問題、小論文や面接を課すところが多く、なかには二次試験を行わず共通テストの得点のみで合否を決定する大学もあります。
合否判定に用いられる配点は大学・学部によりさまざまです。注意したいのは、共通テストと二次試験の配点比率です。二次試験の成績を重視する大学や、特定教科の配点が非常に高い大学もあります。
学校推薦型選抜・総合型選抜
一般選抜と並び大学入試の柱となっているのが「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」「総合型選抜(旧AO入試)」です。
私立大学入試では学校推薦型選抜と総合型選抜による入学者数が全体の半数を占めています。国公立大学では9割を超える大学が学校推薦型選抜を、約5割の大学が総合型選抜を実施していますが、入学者数全体に占める割合は2割程度です。
これらの入試は一般選抜と比べ、「学力不問」と言われることもありましたが、学力の3要素をバランスよく評価するため、調査書や推薦書等の出願書類だけでなく、各大学が実施する評価方法に共通テストを含む教科・科目にかかるテスト、小論文やプレゼンテーションなどを活用することが必須化されています。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)
学校推薦型選抜には大きく分けて、「指定校制」と「公募制」の2種類があります。
「指定校制」は、大学が指定した高校の生徒を対象に行われるもので、指定された高校の生徒でなければ受験できません。
公募制に比べると成績基準などの出願条件は厳しくなりますが、合格率が高いことが特徴です。
「公募制」は、大学の出願条件をクリアしていれば基本的にはどの高校からでも出願できます。出願条件は主に学業成績(学習成績の状況)と卒業年次ですが、ほかに細かい条件をつける大学もあります。
国公立大学と私立大学とではその出願条件に違いが見られます。国公立大学は学業成績の条件が厳しくなっている一方で、私立大学は比較的出願条件が緩やかです。
また、医学科では地域推薦枠を設ける大学も多くあります。県内在住者・県内高校卒業者などが対象で、大学卒業後県内の地域医療、医学研究に従事することが出願要件になっています。医師不足に悩む地方の大学を中心に導入されています。
総合型選抜(旧AO入試)
総合型選抜は学力だけではなく、受験生の大学・学部への適性や特技、資格、学習意欲などを総合的に評価する入試です。
受験生の高い学習意欲、学びへの明確な目的意識が重視されるため、書類審査や面接(面談)に時間をかけて審査・選考が行われます。
「自分はこれに優れている」「こういう動機があるから、この大学で学びたい」など、受験生が自らを売り込む姿勢が必要です。
出願・選抜方法は大学によりますが、私立大学の場合、必要書類を提出した後、講義・セミナーの受講やレポートの作成、面接、小論文により選抜が行われることが多いようです。
出願時期は9月以降ですが、夏休みのオープンキャンパスで事前に面談等を行う大学もあります。
募集要項を早めに確認しておきましょう。
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